仏壇の置き場所はどこが良い?仏間や床の間が無い場合でも大丈夫
2021.07.17
仏壇, 床の間
家の中で仏壇を配置する場所としては、その名のとおり「仏間」が理想であることはいうまでもありません。
お寺でいえば「本堂」にあたり、仏や祖先・故人の霊と交感するために特に設けられた空間、それが仏間です。
しかし新築される家屋の多くで仏間は設計図にはありません。
現代の住宅事情では仏間という「別室」をつくることは、よほど大きなお家でない限りは見られないでしょう。
古くから仏間を受け継ぐ旧家などを別にすれば、仏壇の置き場所を仏間以外に求めるのは、今は特別なことではありません。
ならば仏壇はどこに置くのか?という悩みの答えとして、「床の間」は悪くない選択です。
目次
床の間に仏壇を置くのが好ましい理由
床の間は古くから、家の中でも格式の高い場所とされており、敬いの対象である仏や霊が宿る仏壇が安置されるべき空間の一つといえます。
床の間には掛け軸や鑑賞用の陶器、生け花などが置かれますが、元々は仏像や仏画を置くための場所でもありました。
そうした物たちを劣化させないために、床の間は風通しが良く直射日光のあたらない位置に作られるのが通例で、その環境は仏壇にとっても最良の場所なのです。
単にその片隅に仏壇を置くだけでなく、床の間はその一部を仏壇のためのスペースとすることができ、そうして生まれた空間も「仏間」と呼ばれます。
つまり床の間は、仏壇を置くのに最もふさわしい空間である「仏間」に、生まれ変わること
床の間に仏壇をおくための準備と注意
床の間に仏壇を置く、特に床の間を仏間として設える場合の準備と注意点にはどのようなものがあるでしょうか?
最も気をつけたいのは、設置スペース(仏間)と仏壇の大きさや形とのマッチングです。
仏間にはその大きさによって「半床仏間」「三尺仏間」「六尺仏間」などの種類があります。
このスペースに入らないと大変ですから、購入の前に仏壇を実測して大きさを把握し、仏間との整合を確認します。
関連記事:仏壇独自のサイズ表記「号」とは?お部屋に合うサイズの選び方
半床仏間
「半床仏間」は幅(間口)が半間(ふすま一枚分)の仏間です。
左右の間口が半間を越える仏壇を置くことができないのは当然ですが、半床仏間は下半分を収納スペースとするのが通常ですので、選ぶべき仏壇はその形態にも配慮し、上置き式の中型から小型のタイプなどを選ぶと良いでしょう。
関連記事:ミニ仏壇は小型で人気!通販でも買えますが仏壇店がおすすめ
三尺仏間・六尺仏間
三尺は約90センチ、六尺は約180センチで、仏間ではどちらも幅(間口)の大きさを意味します。
仏壇の幅をこれに合わせ、高さと奥行きも考慮して仏壇を選びます。
また、「鴨居(上部の横木)」や「雑布摺り」などの付属物がある場合は、その大きさや位置が仏壇の設置に影響しないかどうかを確かめておく必要があります。
地袋付仏間
地袋(じぶくろ)とは仏間の下部に作られる収納用の小さな戸棚で、地袋が備えられた仏間を「地袋付仏間」といいます。
地袋部分に仏壇を置くことはできませんので、選ぶ仏壇は上置き式の小型~中型のタイプとなります。
地袋の高さはさまざまですので、その上部の仏壇に使用できるスペースの大きさを把握しておきます。
仏壇を置く向き(方角)について考える
「仏壇は北向きに置いてはいけない」というしきたりを耳にしたことが有ると思います。
お釈迦様が北に頭を向けて入滅したという言い伝えから連想された情報で、就寝時に気にする人も多い「北枕を避ける」の風習もこれがルーツです。
しかし、今日の日本の住環境では、北向きが避けられない事情も多々あり、北向きにこだわる人は少なくなっている様です。
方角を気にするあまり、環境が許さないとして仏壇をあきらめるよりは、いなかる環境でも仏壇を身近に置くことが大切です。
とはいえ、仏壇を置く向き(方角)については様々な考え方があることもまた事実です。
床の間に仏壇を置く場合にも、環境が許す限り古来からの習わしを守ることができれば心も安らぐでしょう。ここでは仏壇の向きを目安とした、代表的ないくつかの置き方を紹介します。
南面北座
お釈迦様は説法をするときに南を向いていたという言い伝えがあります。
また中国では古来、地位が上の者は南を向いて座るという風習があり、仏壇も正面を南に向けて安置すべきという習いとなりました。
お参りする者は北に向かって座りますので、「南面北座」と呼ばれます。禅宗の曹洞宗や臨済宗、そして日蓮正宗では「南面北座」の考え方をとっています。
関連記事:日蓮正宗の仏壇や仏具には日蓮正宗用の専用の物があります
東面西座
極楽浄土は西の方にあるとする「西方浄土」の思想から、仏壇を通して西の方角を向くために、仏壇を東に向けて安置する考え方です。
その位置関係から「東面西座」となり、浄土宗、浄土真宗、天台宗などでは「東面西座」を重視しています。
春夏秋冬
仏壇を置く向きにはだわらず、静かで落ち着いた場所ならばどの方角でも問題ないとする考え方です。
太陽が昇る「東」を万物が芽吹く「春」に、太陽が真上に昇る「南」を万物が成熟する「夏」に、陽が沈む「西」を収穫の「秋」に、陽が遮られる「北」を万物が納まる「冬」に例えて、四季それぞれに意味があり、どれも大切であるということから、仏壇の置き方にも軽重の違いはないことを意味します。
日蓮宗では「春夏秋冬」の立場をとっています。
本山中心
仏壇に手を合わせたとき、その延長線上に宗派の総本山がくるように配置する流儀です。
本山と仏壇との位置関係は千差万別であり、東西南北といった方角へのこだわりに意味はありません。
「本山中心」を説く宗派としては真言宗が知られています。
床の間以外に仏壇をおく場合
床の間は仏壇を置くにふさわしい場所ですが、そもそも床の間がない家も少なくありません。新築住宅では、床の間、仏間はもとより、和室そのものが敬遠される傾向にあります。
これは、家具の変化も大きく関係しており、洋室用のテーブルや椅子などは和室の畳を脚で傷めてしまう為使えません。
模様替えをした際にも、すべての部屋で家具を共通して使う為には、すべて洋室かすべて和室のどちらかにしたほうが効率がよく、その結果和室が無い住宅が増えているのです。
仏間や床の間以外に仏壇の置き場所を探すのは、今の日本では現実的な選択です。そしてそれぞれの場所にもまた、仏壇をおく意味があります。
関連記事:仏壇の「置き場所」や部屋に置く「向き」の最適な方角
リビング・ダイニング
本来、仏壇は風通しがよく静かで落ち着いた空間に置くべきものですが、一方で毎日家族が集まる「リビング」や「ダイニング」ならば、日頃から仏壇、つまりは仏や先祖・故人を身近に感じられるという利点があります。
洋風の雰囲気にもマッチしたさまざまなデザインの「モダン仏壇」も選ぶことができますので、インテリアとしても違和感を生むものではありません。
関連記事:現代の生活に祈りの空間をつくるインテリア「モダン仏壇」
ただし、頻繁に人が出入りするような事情があるならば、これらの部屋は避けます。同じ理由で例えば「玄関」に仏壇を置くのはおすすめできません。
関連記事:リビングに仏壇を置く上での仏壇の向きとおしゃれなインテリア性
書斎・寝室
「書斎」や「寝室」ならば、落ち着いた気持ちで仏や故人の霊と対話や相談ができるでしょう。
くつろぎの空間として日頃から書斎や寝室を大切にしているならば、そこに仏壇を置きたいと考えるのは自然な発想であり、仏壇を置くことに無理はありません。
仏壇を置くべきではない場所
いままでご紹介したどの場所であっても、強い日が当たる場所や水回り近くは仏壇の劣化を早めますので避けましょう。
また、神棚と向かい合わせに配置することも避けるべきとされています。
関連記事:神棚に神を祀るための神具はネット通販より専門店がおすすめ
>まとめ
床の間に仏壇を置くのは良い選択ですが、さまざまな事情で床の間に置けないとしても、憂いを深める必要はありません。
大切なのは、場所ではなく心です。
暮らしの中に仏壇があたりまえの存在として溶け込み、わたしたちが仏や故人を思う気持ちを持ち続けることにこそ意味があります。
そこが居心地の良い場所と感じられるなら、それが仏壇の置き場所として好適であることの証しです。