仏壇に使う仏具の「敷物」は荘厳の他に防護マットの役割があります
2021.06.24
仏具, 敷物
仏具・仏壇用品には様々なものがありますが、その中に「敷物」があります。
法要に参列したときなどに、仏壇まわりが色とりどりの敷物で飾られているのを見たことがあるかもしれません。
この仏具の敷物というのは法要などの場で、仏壇を華やかに見せるためだけのものなのでしょうか?
仏具として使われる敷物には、その他の役割があるのでしょうか?
それでは、仏壇に敷物をかけるようになった由来、仏具の敷物の種類やそれぞれの役割、使い方などを見ていきましょう!
目次
仏具の敷物の役割は仏壇を荘厳すること
まずは仏壇まわりで使用する敷物の「仏具としての役割」を見てみましょう。
仏具は仏事に使う器具の総称で『法具(ほうぐ)』とも呼ばれますが、その役割によって大きく5つにわけられます。
・供養具(くようぐ):仏様・ご先祖様の供養や仏前の荘厳に用いる仏具
・梵音具(ぼんおんぐ):おりん(リン)や木魚など音を出す仏具
・荘厳具(しょうごんぐ):仏壇・御本尊を美しく厳かに飾り付けるための仏具
・僧具(そうぐ):僧侶の衣類や持ち物など
・密教法具(みっきょうほうぐ):密教で用いる独特の仏具
この中で一般家庭で使用するのは、供養具・梵音具・荘厳具の3種類です。
『供養具』は、香炉・花立・ろうそく立て等のいわゆる「三具足(五具足)」を使用した日々の供養や、仏前に供物を置くときに使用する仏具です。
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『梵音具』の代表格リンは、お参りの際に鳴らして使います。
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そして、仏壇内に吊るす綺羅びやかな装飾や仏壇まわりに敷かれた美しい布が『荘厳具』になります。
ですから、仏具の敷物の大切な役割は「仏壇を荘厳する(美しく厳かに見せる)こと」です。荘厳具がきらびやかな色やデザインをしているのは、仏様のいる極楽浄土の様子を目に見える形で表すためです。
すべての仏具には様々な色やデザイン、材質のものがあるのですが、宗派や流派によって用いる仏具が指定されていたり、宗派(流派)専用の仏具があったりするので注意する必要があります。それぞれの仏具の使い方や宗派の作法も確認しておきましょう。
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お釈迦様の座る場所に敷いた布が仏具の敷物の起源
次に、荘厳具である仏具の敷物には、どのような由来があるのかを見てみましょう。
今日仏壇まわりで使用されている敷物の起こりは、お釈迦様の時代までさかのぼります。
当時、お釈迦様が石の上や地面に直接座って説法をしていたのを見かねて、弟子たちが自分たちの着物を高座に敷いたり、花を飾ったりするようになったといいます。
そして、お釈迦様が亡くなった後は、仏像の前の卓の上に敷かれるようになり、その習わしは仏教とともに日本に伝わったのです。
仏具の荘厳具として敷物を使うシーン
基本的に荘厳具としての敷物は、法事や法要などの正式な場で仏壇を美しく厳かに装飾するために使われます。
お盆やお彼岸、お正月や故人の命日など特別な日には、使用する仏具の数を増やして仏壇を荘厳し、多くのお菓子や果物、特別な供物などが仏前に供えられます。
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ただし、仏具の敷物には特別な日に仏壇を荘厳する目的だけではなく、日常の供養シーンで利用されるものもあります。
仏具の敷物の使われる場所
今度は仏具の敷物を置く場所について見てみましょう。
まず、本式に仏壇や御本尊を荘厳する場合には、仏壇の上に『上卓(うわじょく)』や『前卓(まえじょく)』などの台を置き、そこに敷物を掛けてから仏具を置きます。この敷物は『打敷・打ち敷、内敷き』などと呼ばれます。
仏壇の前に設置した『経机(きょうづくえ)』の上にも敷物を敷きますが、こちらは豪華な荘厳用のものというより台の表面を傷や汚れ、火や水から守る目的が強いです。
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仏壇や机などの台に掛けるだけでなく、お参りする空間を荘厳するために経机の下や仏壇前のスペースに広く敷く敷物もあります。
お参りの際に座る座布団も敷物に含まれますが、座布団には日常のお参り用と法事・法要の際に僧侶に座っていただくための座布団があります。
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仏壇まわりで使われる敷物は、その使用目的や使用場所によって素材(生地)や形状、サイズや設置方法などが異なります。
それでは、ここから先は順々にこれらの敷物について詳しく見ていきましょう。
仏具の敷物の代表格『打敷』
仏具の荘厳具の敷物の中で代表的なものは『打敷・内敷き(うちしき)』です。
金襴(きんらん)で織られた綺羅びやかな布で、法要など特別な行事の際に仏壇に置かれた『上卓』や『前卓』の天板の下に挟んで使用します。
「打」という漢字には「張る」という意味もあり、仏壇の卓上に張って敷くことからその名前になりました。「打布・内布(うちぬの)」と呼ばれることもあります。
打敷にも様々な種類があるのですが、最も大切なポイントは宗派や流派、仏事シーンにあった打敷を選ぶことです。
宗派によって異なる打敷の形や柄
打敷は宗派によってその形状が違います。
浄土真宗では『三角打敷』と呼ばれる逆三角形の打敷を用います。卓の左右に垂れ下がる形で掛けるので、卓の幅よりも少し大きいサイズのものを使用します。
主に織物の打敷や宗紋が刺繍されたものを使いますが、大型の打敷には『三方仕立』と呼ばれる、左右に垂らす部分にも刺繍が入ったものもあります。
禅宗、真言宗、浄土宗、日蓮宗など浄土真宗以外の宗派では、長方形の『角打敷』を使用します。こちらのサイズは卓の幅と同寸のものを使用します。
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白い打敷は中陰のときに使う
故人が亡くなってから四十九日を迎えるまでの期間のことを「中陰(ちゅういん)」と呼びます。
中陰の間は『後飾り祭壇』を設置し、そこに故人の写真や供物を飾ります。その祭壇に掛ける敷物は金襴などではなく、中陰用の白無地か銀色の打敷を使用します。もし用意できない場合は、通常の打敷を裏返した白い面で代用することも可能です。
打敷の掛け方
打敷は原則として祥月命日(しょうつきめいにち)以上の年忌法要や、中陰法要(ちゅういんほうよう)、お盆やお彼岸、お正月や結婚式などの特別な行事の時に用いるものです。浄土真宗では親鸞聖人の命日を偲ぶ法事『報恩講(ほうおんこう)』の日にも使います。
打敷は仏壇に置かれた『上卓・上机』や『前卓・前机』の上に置くのではなく、垂れ下がるように掛けて使います。上卓は『須弥壇(しゅみだん)』に、前卓はその下の段に置かれる仏具をのせるための台です。
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打敷を掛ける際の流れは、まず上卓や前卓の上にのっている仏具をどかして仏壇から下ろします。そして上部の天板『下須板(げすいた)』をいったん外し、本体の上に打敷の白い布の部分を置いて天板を戻して挟み込みます。
三角打敷の場合は、左右のはみ出した部分が前から見たときに下に向かって広がるように折り込んで形を整えましょう。
打敷のサイズの選び方
それでは、打敷のサイズの選び方を見てみましょう。
仏具の打敷のサイズは上卓や前卓のサイズに合わせるものですが、卓の大きさは仏壇の大きさによって異なりますよね?
仏壇のサイズは上置き型の仏壇の場合は「号」、台付仏壇の場合は「尺」、金仏壇の場合は「代」と表示されます。たとえば上置き型の表記は14号・16号・18号・20号といった具合です。
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目安として上置き型のミニ仏壇の18号サイズには、通常「9寸(27cm)」程度の卓を置きます。ですから、敷物の方も『角打敷』なら「9寸サイズ(幅27㎝)」の物を選びます。
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『三角打敷』の場合には「名古屋寸法」や「京寸法」が使われ、敷物のサイズは「寸」ではなく「代」で表示されます。
注意するべきポイントは、この「代」は名古屋寸法と京寸法で異なるというところです。たとえば、18号サイズの仏壇の9寸の卓に掛ける三角打敷は、名古屋寸法の場合は「40代(幅38~39cm)」で、京寸法だと「70代」と全く異なるのです。
ですから、特に三角打敷を購入する時にはあらかじめ卓の横幅を測ってから仏壇・仏具専門店へ行き、お店の人に相談することをおすすめします。古くなった打敷を買い換える場合には、店舗に現物を持って行けば安心ですね!
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仏具の打敷の種類と選び方
打敷には様々な種類(色柄・素材・デザイン)のものがあります。
打敷の種類(色・素材・デザインなど)
本式の打敷は金糸、銀糸を使った絹織物であったり、刺繍が施されたりするものが多いです。表は金襴などきらびやかにつくられていますが、裏側は白無地となっています。よくあるデザインは鳳凰(ほうおう)や菊などの花柄、宗紋を入れたものです。
その素材ですが、実は打敷には「夏用」と「冬用」があって、季節の変わり目には打敷も衣替えをするのです。
夏用の打敷は、6月頃~9月の彼岸入りまでの期間に使用します。絽(ろ)や正絹紗(しょうけんしゃ)など薄手の生地で作られていて、色も白や緑、青や紺など涼やかな色合いのものが多いです。
冬用の打敷は、彼岸入り~5月頃まで使用します。厚手の生地に金襴で織られ、刺繍が施されている派手な見た目のものが多く、色は主に金、朱、茶、紫などの強い色合いが使われています。
打敷は季節やシーンにふさわしいものを飾るものです。たとえば、お正月には冬用の豪華な金襴、お正月らしく朱・緑・白の3色の打敷などを選ぶと仏壇が華やいでいいですよね!
打敷の値段は、使われている生地や仕様、作業工程などでかなり変わってきます。
人絹製で機械刺繍の場合は、安いものだと600~700円程度の金額で購入できますが、正絹で手づくりの高い打敷の価格は数千円~1万円します。工房でつくられた西陣織に手刺繍付きの伝統工芸品(綴織り)などは、数百万円する高級品もあるようです。
打敷の上には仏具を置くので供物やロウで汚れてしまったり、線香の燃え落ちた火で穴があいてしまうこともあるでしょう。ですから、いつでも掛け換えられるように、3色や4色でセット販売されているお得な商品を購入するのも一つの選択肢ですね。
仏具の敷物を仏壇前の床スペースに使用する
仏具の荘厳具としての敷物は、打敷だけではありません。
打敷は仏壇に掛けますが、お盆の時期に仏壇前に設置する『精霊棚(しょうりょうだな)』に掛ける敷物もあります。大きめの祭壇用の布で主に金襴のものを使用します。組み立てた台の上に広げ掛け、その上に故人の位牌や写真、霊具膳(れいぐぜん・りょうぐぜん)などの供物、五具足などの供養仏具、数珠やおりん等のお参り仏具を並べ、その両脇には盆提灯を飾ります。
仏壇の前のお参りスペースに広く敷いて使用する敷物もあります。
『御仏前敷(ごぶつまえしき)』や『御前拝敷(おまえはいしき)』という名前で、い草でつくられています。
最近では、正座して快適にお参りできるように金襴の裏がフェルトマットになっているものや、火回りでの安全性を考えてアルミシートが圧着されたものなど機能的な商品が多く販売されています。
日本製の金襴時の敷物は1~2万円前後と若干高価になりますが、新築祝いギフトや法事の際の贈り物として人気があります。
その他、『御前座布団(おまえざぶとん)』も仏具の敷物です。法要の際には僧侶にこの座布団の上に座って読経をあげていただきます。金襴、紺、朱、緑などの色があり、柄は鳳凰や蓮、菊や小葵などと様々です。カバーのみの商品もあります。
こちらは安いもので5千円程度、高いものだと1万円~1万5千円前後で販売されています。
御前座布団は高価で取り扱いがデリケートなので、普段は収納しておいて法事・法要の際に取り出して使用することをおすすめします。
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仏具を置くために使用する様々な敷物
仏壇前に置かれた『経机(きょうづくえ)』の上に敷く敷物もあります。
経机はもともと経文をのせる机でしたが、現在では香炉や数珠、おりん等のなど仏具をのせて使用します。
こちらは仏壇まわりを荘厳するというよりも、経机が汚れたり傷がついたりするのを防ぐために敷くものです。
経机の上には香炉・花立・ローソク立てなどの仏具を置きますから、ローソクや線香の火や線香の燃え残りの灰などから経机を守る必要があります。ですから、ほとんどの経机敷きは燃えにくい防炎マットだったり防火加工がされているのです。撥水加工がされたタイプも多いので、つい花立を倒してしまっても安心ですね!
唐木の美しい木目を隠さないよう透明シートになった敷物もあります。様々なサイズの商品が販売されているので、経机の縦横の長さに合わせて選びます。
同じ目的で使用する敷物に『上置用経敷』がありますが、こちらは仏壇の膳引きやミニ仏壇の段上に敷いて、その上に仏具を直接おくための敷物です。
細長い形をしていて、奥行きは10cm~13cm程度(巾24cm,30cm,39cm)なので、あまり奥行きのないミニ仏壇や膳引き部分にも難なく置くことが可能です。ミニタイプですと「cm」でなく14号・16号・18号という「号」の表示で販売されていることもあります。
経机敷きや上置用経敷は、安価な織物プリントから高価な京友禅のものまであります。デザインは金襴や菊などの伝統的な和柄タイプと、桜・小梅・若葉などのモダンな花柄などがあり、仏壇や経机の種類(唐木・塗・モダン)に合わせて選べるのがポイントです。
最近人気の手元供養用のおしゃれな敷物
最近人気の『手元供養(てもとくよう)』用の仏具や敷物はおしゃれでモダンな物が多く、まるでインテリア雑貨のようです。こちらは供養台の前に敷いて、その上に仏具を置いて使用するミニタイプの敷物です。
デザインは和風、ボタニカル柄、ボーダー柄、可愛らしいうさぎちゃん柄とバリエーションが豊富、サイズや形状も様々で丸いラグタイプやミニ畳敷き、中には各仏具の下に置けるコースター型のミニ敷物もあります。金額も300円~500円位のお手軽価格の商品から販売されているのが嬉しいですよね!
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手元供養では愛しいペットの位牌や写真を飾り、身近に感じながら供養をする方も急増しています。
ランチョンマットのようなかわいい敷物に小さい仏具を並べて、ワンちゃん・ねこちゃんの好物のペットフードをお供えしてあげるなんて素敵ですよね!
手元供養の敷物の色はかわいいピンク、お部屋のアクセントにもなるビビットカラー、シックなベージュや白茶など多彩です。手元供養用の敷物をお探しの方は、豊富な商品の中から希望のカラーやデザインのものが必ず見つけられることでしょう。
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仏具の敷物類はどこで買う?
この様に色々な種類の仏具の敷物がありますが、一体どこで買うのが良いのでしょうか?
買い物といえばネット通販!という方もいらっしゃると思います。
ページ内を検索して注文すれば、北海道から沖縄まで送料無料で発送して、自宅まで届けてくれる便利なサービスですから、若者から年配の方まで広く使われていますよね?
しかし、配送の条件が複雑だったり、クーポンの使い方が分からなかったり、注文したけど在庫がなかったりと、サービスが多い分、迷ってしまう事が多くすんなり買い物ができないという方もいらっしゃいます。
使いこなせる方にはお得で便利なサービスですが、もっとシンプルに仏具の敷物を購入したい場合には、やはり仏具店へ行くのが一番です。
ネット通販では自分で探して、自分で選んで吟味して商品を決めなければなりませんが、仏具店では「国産でお花の柄の敷物が欲しい」と自分の希望を言うだけです。
あとは仏事に詳しい店員さんが色々と商品提案をしてくれるでしょう。
>まとめ
この記事では仏壇まわりを荘厳するための敷物、仏壇や経机などを仏具の不始末から守るための敷物、インテリア雑貨のように供養スペースを明るくかわいく彩るための敷物について詳細にご紹介しました。
仏具の敷物には様々な種類がありますから、使用シーンや使用場所、使用目的に合わせたものをいくつか持っておき、使い分けるのがポイントですね!
ここで得た情報を、実際に敷物を購入する際に役立てていただけたら嬉しいです。