仏壇の置き場所よりも宗派別の祀り方や仏具の配置の方が大切です!
2021.06.26
仏壇, 配置
仏壇に置く仏具の配置をご存知でしょうか?
はじめて仏壇を購入したばかりの方、仏壇をもった経験のない方は、よくわからないのではないでしょうか?
ずっと仏壇をお持ちの方でも、引っ越しや掃除の際にいったん仏具をおろしてしまうと、どこに何が置いてあったのか、配置に自信がなくなってしまいますよね?
家の中での仏壇の置き場所では直射日光の当たらない仏間がおすすめとされたり、部屋に仏壇を設置する際には『南面北座説(なんめんほくざせつ)』など、宗派によって推奨される仏壇の向きや東西南北の方角なども存在します。
しかし、これらは絶対必要なルールではないので、それほど問題ではありません。
一方、仏壇内での仏具の飾り方には厳密な決まりがあり、供養仏具などの置き方は宗派によっても異なるので気を付けないといけないのです!
と言うと大変な感じがしますが、ご安心ください。
この記事では仏壇の内外での配置を、仏具のもつ意味や役割と共に詳しく解説していきます。
目次
仏壇で最も大切なのはご本尊の配置です
仏壇とは家庭でも仏様をお祀りできるよう、お寺を小型化したものです。
ですから、拝む対象を正しく配置してお祀りすることが最も大切なのです。
仏壇内での仏像の配置
仏壇の最上段を『須弥壇(しゅみだん)』と呼びます。
須弥壇の中心には各宗派で決められている「ご本尊」を安置します。
ご本尊の形には仏像と掛け軸がありますが、その役割は同じなのでどちらを選ぶこともできます。
ただ、日蓮宗のようにご本尊は掛け軸を祀ったり、浄土真宗のように「総本山からの掛け軸しか認めない」というように、宗派やお寺によっての指定がある場合があるので注意しましょう。
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仏壇内での掛け軸の配置
須弥壇の中央に安置したご本尊の左右には、『脇侍(わきじ)』と呼ばれる仏の補佐役(菩薩や明王、天など)を配置します。脇侍の形にも仏像と掛け軸があるのですが、中尊を仏像、左右の脇侍を掛け軸『脇掛(わきがけ)』とする方が多いです。
ただ、自分でどの脇侍にするか決めるわけではなく、各宗派で決められた組み合わせの脇侍を選びます。
荘厳具の配置
仏壇には、ご本尊を美しく厳かに祀るための『荘厳具(しょうごんぐ)』や灯火具を使用することも多いです。
『瓔珞(ようらく)』や『輪灯(りんとう)』、『吊り灯篭(つりとうろう)』などは、ご本尊が明るく輝いて見えるように、須弥壇の上から吊るして飾りつけます。
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ご先祖様や故人の位牌を仏壇に配置する際の注意点
須弥壇の下の段には、ご先祖様や故人の位牌を配置します。
位牌はお葬式では祭壇に「白木の位牌」を祀りますが、葬儀が終わった後には故人の戒名などを文字入れした「本位牌」を用意し、四十九日法要の後に仏壇に安置します。
ご先祖様や故人の位牌の配置
位牌を置く際の注意点は、位牌でご本尊が隠れてしまわないようにすることです。仏壇で最も大切なのはご本尊様ですから、位牌の寸法や高さには注意しましょう。
もうひとつのポイントは、位牌の配置には「上座と下座がある」という点です。一番古いご先祖様の位牌を右側に置き、そこから左に向かって順に配置していきます。
年功序列のマナーやご先祖様の供養を大切にする日本人らしい考え方ですよね!
すべての位牌が段に収まらない場合には下の段も利用して置きますが、それ以上増えてしまった場合には、複数の位牌をまとめられる『繰出位牌(くりだしいはい)』をおすすめします。
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ご先祖様や故人の写真
なお、位牌の近くに故人の写真(遺影)を置く方がいますが、仏壇は拝む対象や供養のための仏具を祀るための場所なので、いくら大切な家族の写真であっても仏壇の中に置くのは正式な作法ではありません。仏壇内や仏壇の正面は避け、近くの家具の上などに飾りましょう。
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位牌以外のご先祖様や故人の祀り方
位牌はすべての宗派で仏壇に安置されるわけではありません。
浄土真宗系の宗派(高田派以外)では位牌は置かず、その代わりに故人の法名(戒名のこと)や没年月日などが記入された『法名軸(ほうみょうじく)』という掛け軸を飾ります。
浄土真宗では故人は「阿弥陀如来」と共に浄土にいると考えられるので、法名軸はご本尊と同じ須弥壇に飾られます。その配置は、仏壇内の向かって右側面に直近に亡くなった方の法名軸、左側面には代々の法名を記した『総法名軸』を掛けます。
その他の個々の法名軸は、祥月命日や年忌に出して仏壇前に掛けますが、平時は引き出しの中などに収めておくのが一般的です。
同じ役割をもつ仏具に『過去帳』がありますが、これは故人の法名・没年月日・俗名・享年・続柄などが記入された帳面で、すべての宗派で使用する仏具です。
過去帳は『見台(けんだい)』という台に載せ、ご先祖様や故人の月命日の日にそのページを開いてお参りします。
過去帳の配置場所は宗派や仏壇の大きさなどで異なりますが、仏壇内の場合は位牌よりも下の段に置くことが多いです。
仏壇に基本仏具を配置する際の基本の祀り方
今度は仏様へのお供えや、故人の供養に使用する基本仏具の配置を見ていきましょう。
仏壇のお供えの基本『五供』
仏教でのお供えの基本は『五供(ごくう)』とされます。
・香り供養
・花供養
・灯り供養
・浄水供養
・飮食(おんじき)供養
ですから、仏壇には様々な仏具を配置して「線香・仏花・ローソク・水・ご飯」をお供えするのです。
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仏壇での浄水供養と飮食供養
五供の中でも仏様や故人の喉の渇きやお腹を満たす「浄水供養」と「飮食供養」は大切です。毎日朝起きたら、仏前に新鮮なお水や淹れたてのお茶、炊きたてのご飯をお供えしましょう。
お水やお茶を入れた『茶湯器(ちゃとうき)』は左側、ご飯を盛った『仏飯器(ぶっぱんき)』は右側の配置にして、須弥壇のご本尊の前、もしくは位牌の左横に供えます。その際、『仏器膳(ぶっきぜん)』にのせてお出しすると丁寧です。
『高坏(たかつき)』にのせた餅や菓子、果物などは二番目に大切な飮食のお供え物なので、お水やご飯の下の段に置くのが一般的です。
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三具足と五具足
浄水と飮食以外の「香り・花・灯り」の供養に使用する仏具は、『香炉(こうろ)』『花立(はなたて)』『火立(ひたて)』です。
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この3つはすべての宗派で最低限必要とされる仏具で、これらをひとつずつ使用する組み合わせを『三具足(みつぐそく)』と呼びます。
そして、使用仏具は同じですが、香炉をひとつ、花立と火立を1対ずつ使用する組み合わせは『五具足(ごぐそく)』と呼ばれます。
五具足を使用する方が丁寧とされるので、法要を行う際などには仏壇に五具足を配置して本式にします。
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仏壇での三具足の飾り方
仏壇内に三具足を飾りつける際には、できるだけ下の段、もしくは手前の方に配置します。なぜなら、朝一度お供えするだけのお水やご飯と異なり、この3つの供養仏具には動きがあるからです。
お参りの時にはローソクを灯し、火を線香に移して香炉に立てますから、手前に配置した方が供養の流れがスムーズなのです。
それに、手前に置いておけばローソクや線香から立ち上るススが仏壇に付着することも少ないですし、ロウや線香の灰が落ちてしまった時にもすぐに掃除ができます。
花立も水を取り替えたり、枯れた花や葉の処理などのお手入れ面を考えるなら、やはり手前にあった方が便利でしょう。万が一花立を倒してしまっても、仏壇内に湿気が残る可能性は最小限ですみますよね?
三具足の配置は向かって左から、花立・香炉・火立というように置きましょう。
五供のサポート仏具である『線香立て』『マッチ消し』『ローソク消し』などは、香炉の左側に置いておくと使い勝手がよいですね。
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お参りの際に使うおリンや数珠などは、向かって右端に置きましょう。
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仏壇での五具足の飾り方
法事や法要を行う際に仏壇を五具足で祀る場合には、仏具の並べ替えをします。
その際の配置は香炉を中心に置き、その左右に1対の火立、その外側に1対の花立を飾り付けましょう。
ここまで、各仏具がもつ意味や役割と共に、仏壇内での配置の基礎知識をご説明してきましたが、仏壇の飾り方や仏具の置き方は宗派やお寺、仏壇の種類やサイズなどで異なります。
では、ここから先は仏壇外での仏具の置き方や、宗派によって変わる仏壇の飾り方をご紹介していきます。
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仏壇前に経机を置く場合の仏具の配置
家の仏間や床の間に仏壇を置いているご家庭では、仏壇の前にスペースの余裕があるので、そこをお参りのための場所として広く使えます。
その場合には、仏壇内にすべての仏具やお供え物を配置する必要はないのです。
仏壇の置き場所よりも宗派別の祀り方や仏具の配置の方が大切です
理想的なのは、その広く空いた場所に畳1畳くらいのサイズの『御仏前敷(ごぶつまえしき)』というイグサを素材とした敷物を敷いてお参りスペースにします。
そして、仏壇前に『経机(きょうづくえ)』や『供物台(くもつだい)』を設置します。どちらかだけでも良いのですが、両方使用する場合の配置は、経机の方を手前側に置きます。
関連記事:仏具の台にはどんな種類が?供物台や仏壇前の経机だけじゃない!
経机の手前で正座をしてお参りすることになるので、仏壇に向けて手を合わせやすい位置に『仏前座布団』を敷きましょう。
関連記事:仏壇の前に敷く「仏前座布団」・「御前座布団」は通販よりお店で
仏壇の前に経机を設置
仏壇の前に設置した経机や供物台に仏壇内の仏具を移動させると、毎日の御供養や礼拝の流れがとてもスムーズになります。
経机や供物台は、仏壇内に仏具の置き場所があまりない場合、そして特に法事や法要の際に多くのお供え物を置きたいときには最適です。
関連記事:仏具の台にはどんな種類が?供物台や仏壇前の経机だけじゃない!
経机の上に置く仏具の配置
経机の上にはお参りのための仏具を配置します。
仏壇の最下段に置く仏具を経机に移動すると考えてください。
三具足や五具足の祀り方、線香立てなどの供養サポート仏具、数珠やおリンなどのお参り仏具の配置もすべて仏壇内と同じです。
少しだけバリエーションがあるとしたら、花立だけは仏壇に残す人がいたり、経机に見台にのせた過去帳を置く場合も多く見られる点です。
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見出し
高齢になると、一日に何度も立ったり座ったりしなければならない正座での供養は大変です。ですから、最近は仏壇の前に椅子を配置して毎日の礼拝を行う方が増えています。
それに合わせる形で通常は30cm程度の高さの経机も、最近は背高タイプのものが購入できるようになりました。
仏壇用の椅子には、和室の部屋に置く正座をサポートするタイプや、リビングのモダン仏壇に合わせて使える背もたれ付きの椅子など、様々な高さやサイズ、素材やデザインのものがあります。
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現代の住宅事情では、東京などの大都市でマンション暮らしをする人も多いですから、リビングや寝室などの限られたスペースに設置した仏壇台の上にミニ仏壇を置き、椅子に座ってのお参り方法も人気があります。
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ただし、リビングの家具や仏壇台の上にミニ仏壇を置く場合には、その高さに注意してください。椅子に座ってのお参りで、ご本尊を上から見下ろして拝む形になってしまうのは、決して良いことではありません。
もし、どうしても仏壇の位置を変えられないのなら、お参りの時だけ床に直接座布団を敷いて正座をしましょう。
浄土真宗での仏壇の仏具の配置
浄土真宗の考え方では、亡くなった方はすぐに仏様(阿弥陀如来)のいる西方浄土に旅立ちます。ですから、仏壇にはご先祖様や故人の位牌は置かないのが基本ですし、追善供養も行いません。
仏壇に位牌や故人へのお供え物を置かないということは、仏壇内の配置も他の宗派とはかなり異なります。更には、同じ浄土真宗でも派によって、使用する仏具の種類や名称、個数などが違うのです。
四具足の配置
浄土真宗では三具足(または五具足)とは別に、『四具足(しぐそく)』と呼ばれる仏具セットを用いてご本尊を荘厳します。
四具足は須弥壇の前に『上卓(うわじょく)』という台を置き、その上に飾りますが、その仏具の組み合わせと配置は、本願寺派と大谷派で異なります。
本願寺派では、台の手前中心に『火舎香炉(かしゃこうろ)』、その左右に1対の『華瓶(けびょう)』、香炉の後ろに『燭台(しょくだい)』を配置します。
『火舎香炉』は浄土真宗系で使用するフタ付きの焼香用香炉で、『華瓶』には花ではなく「樒(しきみ)」という植物と水を入れ「香水」としてお供えします。
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真宗大谷派でも、火舎香炉と華瓶の配置までは同じですが、燭台の代わりにご飯を盛った1~2個の『仏器(ぶっき)』を置きます。
三具足(五具足)の配置
四具足の下の段には『前卓(まえじょく)』を置き、その上に三具足(五具足)を配置します。浄土真宗で使用される三具足は『土香炉(玉香炉・透かし香炉)』『花瓶(かひん)』『燭台』です。仏具の種類や呼び方は異なっても、前卓の上に三具足(五具足)を置く時の仏具の配置は他の宗派と同じです。
ただ、三具足(五具足)を置いた前卓の左右には、1対の『供笥(くげ)』を飾ります。これは他の宗派での高坏と同じ役割の仏具ですが、本願寺派では六角供笥、大谷派では八角供笥を使用します。
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なお、最近では仏壇での花供養にお手入れが楽な『常花(じょうか)』などの造花をお供えする方も多いですが、浄土真宗では花瓶に生花をいけてお供えします。
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浄土真宗だけでなくほとんどの宗派では、法事や法要の際に仏壇の台に『打敷(うちしき)』を飾り荘厳します。浄土真宗の場合は、上卓と前卓に『三角打敷』を掛けて、その上に仏具を配置します。この荘厳具の敷物は、お釈迦様が説法をする時に地面に直接座っていたので、弟子たちが自分たちの服などを敷いたことに由来します。
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こうした仏壇内の仏具の配置は宗派での決まりごとがあるだけでなく、地域のお寺の考え方などによって異なる点も多いのです。不安な場合は親戚の方に相談したり、菩提寺に問い合わせて確認しておくと安心できますよ!
親戚や菩提寺のご住職への相談はちょっとハードルが高いという場合には、お近くの仏壇店へご相談ください。
仏事のエキスパートが親身に相談にのってくれるでしょう。
>まとめ
仏壇での仏具のもつ意味や役割を考えながら置くと、仏具の配置も思ったほど難しくはないと思いませんか?
神や仏の祀り方は宗教・宗派・流派はもちろんのこと、地域のお寺や神社、ご家庭によっても様々なやり方が存在します。
ここでは仏教での一般的な仏壇内外の仏具の配置についての情報をご紹介しましたが、その他の仏具の祀り方や神棚に置かれた神具を見たときに、なぜその配置なのか考えて理由を探すのも楽しいと思いますよ!