引っ越しで仏壇を移動する前の注意!必要な供養とその準備と方法
2021.06.17
仏壇, 引っ越し
毎日の暮らしのなかで、日頃手を合わせている仏壇を移動しなければならないという場面は多くありません。
しかし、いざ仏壇を動かすとなるとどうでしょう。
事前の確認や準備は? 必要な仏事は? 具体的な方法は? 注意点は?
仏壇は一度設置したらほぼ動かすことはありませんから、分からないことだらけです。
ご本尊や先祖・故人の霊が宿る「仏壇」は、一般の家具や什器備品とはその取り扱いがまったく違い、動かす前にも供養が必要なんです。
仏壇のある家が転居するとき、仏壇の置き場所が変わるときにも慌てずに粛々と仏壇を新しい置場所に静置するために、私たちが知っておくべき基本的な流れを紹介します。
目次
仏壇の引っ越し・移動で大切な二つの仏事
仏壇の引っ越しに際して欠くことのできない仏事が、移動前の「魂抜き(閉眼法要)」と移動後の「魂入れ(開眼法要)」の二つです。
事情があって仏壇が元の場所を離れ、新しい場所に落ち着くまでのあいだ、仏壇に安置される本尊や位牌は魂を宿すことができないのです。
引っ越し前に欠かせない仏壇の「魂抜き」
「魂抜き」は文字通り、本尊や位牌から魂を“抜く”儀式のことで、「閉眼供養」「閉眼法要」「お性根抜き」などとも呼ばれます。
本尊や位牌から魂が抜かれることで仏壇は礼拝の対象から「物」になり、「物」になることで仏壇は動かすことができます。
浄土真宗では「魂抜き」を行わない
宗派によって作法の違いがあり、たとえば浄土真宗では“魂が宿る”や“本尊の目を開く”という考え方がありません。
別に「遷座法要」や「遷仏法要」と呼ばれる法要を行いますが、仏壇を移動する前後に仏事を執り行うことでは他宗派と同じです。
引っ越し1週間前から前日までに行う
「魂抜き」は「魂入れ」に先だって行い、実施は引っ越しの1週間前から前日までがおすすめです。
早すぎるとその間、毎日のご供養ができません。
かといって、引っ越しで運搬する当日に慌てて行うというのも考えものです。
新居では仏壇に「魂入れ」を行う
旧居で「魂抜き」を終えた本尊や位牌に再び魂を“込める”のが「魂入れ」です。
「開眼法要」「開眼供養」「精入れ」などとも呼ばれ、土地によっては「お仏壇開き」と呼ぶところもあります。
浄土真宗では呼び方が異なり、仏(阿弥陀如来)を“お迎えする”との考えから「入仏式」「入仏法要」などと呼びます。
「魂入れ」がなければ仏壇は「物」のままです。本尊や位牌が魂を宿して初めて、仏壇は私たちが手を合わせる対象となります。
同じ室内での仏壇の移動では魂抜きはしない
転居をするのではなく、同じ敷地にある家内で仏壇や本尊・位牌だけを動かす場合は、「魂抜き」と「魂入れ」を同じ日に行いますが、同じ室内での移動ならば、「魂抜き」も「魂入れ」も必要ありません。
仏壇の引っ越し・移動には事前の準備を
仏壇の引っ越し・移動に際して、まずすべき事は仏壇のサイズ(縦・横・高さ)を測ることです。
仏壇のサイズに合わせて実測
新居で仏壇を置く予定の場所に、正しく仏壇を納めることができるのか、目測ではなく実際に測って確認してください。
階段やエレベーター、廊下、玄関ドアを無理なく通過できるかどうかも確かめて置きましょう。
また、移動を業者に依頼する場合は、見積時に仏壇の寸法をきかれることも多いので把握しておいてください。
仏壇の仏具の配置を写真に撮っておく
移動を開始するまでに、仏壇全体の写真を撮っておくのもポイントです。
位牌や高坏、香炉、掛け軸などの仏具は、移動のときにはすべて仏壇の外に出しますので、その配置を写真で記録しておき、移転先で写真通りに復元します。
仏具の配置は宗派によって違いがありますので、うろ覚えにならないよう注意してください。
関連記事:宗派と供養別の仏壇の飾り方・仏具の置き方・お供え物の並べ方
仏壇の引っ越し・移動を自分で行うか?業者に依頼するか?
引越しで仏壇を移動するには、自分でする場合、引っ越し業者へ依頼する場合、仏事の専門家(仏壇・仏具店など)に依頼する場合の三つのパターンが考えられます。
事前の準備や、それぞれの違いや注意点について見てゆきましょう。
仏壇を自分で運ぶ
さほど遠くない距離での引っ越しならば、仏壇の移動は業者に任せず無料で自分で行うこともできます。
その場合最も注意すべき点は、仏壇を破損したり傷つけたりしないようにするということです。
仏壇は、たとえ小型のタイプであっても、決して軽い家具ではありません。
持ち上げたとき予想外に重いと安定した作業ができず、破損事故につながりますから、一見容易に一人で移動できそうに見えたとしても、仏壇は二人で支えながら運ぶのが原則と心がけましょう。
またその際、仏壇は毛布や緩衝材などで包み保護しましょう。仏壇から出した本尊や位牌は白い布や袱紗で包み丁寧に扱い、他の仏具も一つ一つ緩衝材で保護します。
自家用車で仏壇を運ぶ際、助手席に載せられる程度の大きさならば、仏壇は座席に固定します。トラックの荷台に置く場合は横倒しにはせず、移動中に転倒しないようしっかり固定してください。
本尊や位牌はできるだけ荷台に積まず、自分の手で持って運びましょう。
引っ越し当日、仏壇は旧居から最後に運び出し、新居には最初に運び入れるのが作法とされています。
これは、他の荷物にかまけて仏壇を放置しないための工夫でもあります。
仏壇を置くのは「南向き」か「東向き」が良いとされていますが、厳格な決まりではなく、新居の状況によっては叶わない場合もあります。この辺りは宗派による違いもありますので、事前に菩提寺に確認しておきましょう!
関連記事:仏壇の「置き場所」や部屋に置く「向き」の最適な方角
引っ越し業者へ依頼する
転居先が遠方であったり、サイズの大きな仏壇を動かすなど、仏壇の引っ越しは個人の力では容易でないことも多く、転居の専門業者に依頼するのが現実的です。
ただし、引っ越し業者のなかには仏壇の配送を受け付けないところもありますので、事前に確認しましょう。一方で、仏壇を専門に取り扱っている運送会社もあり、仏壇のクリーニングなどのオプションサービスを設けているところもあります。
引っ込業者へ依頼した場合も、仏壇に安置されていた本尊や位牌は自分で運ぶのが原則です。魂抜きが済んでいるとはいえ、本尊や位牌は特に神聖なものとして、業者はその取扱いを遠慮することがあるのです。
本尊や位牌は風呂敷や袱紗に包み、傷のつかないよう静かに運びます。位牌は台座と文字板を支えるように、必ず両手で持ちます。片手で持つと文字板が台座から外れてしまうことがあるのです。
関連記事:文字入れが必要な本位牌は通販より仏壇店での購入が安心!
知識を持った専門店に依頼する
仏壇店(仏壇・仏具の専門店)では、仏壇の引っ越しについても専門の知識を活かし、的確に対応してくれますが、注意すべきはその費用です。
引っ越し業者への依頼では、仏壇も基本料金に含まれる場合があるなど全般的に割り安ですが、比べて専門店への依頼は割り高になる傾向があります。
ただし、引っ越し業者のなかには仏壇を「美術品」と位置づけて高めの費用を設定しているところもあり、移動距離などでも大きく変わってきますので、いずれに依頼する場合も事前に見積もりを取って検討しましょう。
引越し先の地域での仏壇や仏具の決まりごとも仏壇店に相談
仏壇や仏具を購入した近くの仏壇店でも、引越やそれに伴う仏具、仏壇の取り扱いについて相談にのってもらえる場合があります。
分からないことはプロに聞くのが一番ですから、お付き合いのある仏壇店や近くの仏壇店に相談してみると良いでしょう。
また、近隣の市区町村や、同じ市内での引越しであれば問題ないのですが、遠方地への転居の場合では、地域で行っている風習が違う場合もあります。
転居先でお寺様に地域の風習についてお聞きするのはもちろんですが、事前にある程度情報があると安心ですよね?
こういった場合にも、転居前に地元の仏壇店さんに教えてもらうと良いでしょう。
いくつか店舗のある仏壇店さんもありますし、店員さん自体がいろんな地域に異動している場合もありますので、事前に墓にまつわる風習や、用意するお布施の金額の目安などの情報が聞けることもあります。
>まとめ
引っ越しに伴う仏壇の移動には、「魂抜き」・「魂入れ」といった仏事を要するなど、通常の物品にはない特別な配慮が求められます。
ただでさえ忙しい引越しでは、物の移動の他、電気・ガス・水道の変更や、金融機関に行政へも行かなければなりませんから、そこに更に仏壇の移動に伴う供養の手配までするのは大変かもしれません。
しかし、誠意を尽くして仏壇の引っ越し・移動をやり遂げ、新居で最初に手を合わせるときの清々しさは格別です。