リビングに仏壇を置く上での仏壇の向きとおしゃれなインテリア性
2021.07.17
リビング, 仏壇
家族が集う洋風の居間、いわゆる「リビングルーム」に仏壇を置くケースは少なくありません。
家の中で仏事の中心となる「仏間」に仏壇を置くのが本来の姿ですが、仏間を設える余裕などないという住宅事情からリビングに置く場合や、あるいは何らかの事情でリビングを選ぶこともあるでしょう。
また特に事情や深い考えはなく、「格好のスペースがそこにあっただけ」という場合もあるでしょう。
リビングという洋風の空間に仏壇という伝統的な存在が設置されているという、もはやあたりまえの光景は、はたして好ましいものなのか?
リビングに仏壇を置く場合には、どのような配慮が必要なのかをご説明いたします。
目次
現代の生活ではリビングは仏壇の置き場所としてふさわしい
すべての前提として、仏壇を家内のどこに置かなければならないのか、またどこに置いてはいけないのかといった“絶対的”な決まりはありません。
あるのは、仏壇を置くならばできればこうあるべきという伝統的な考え方と、今日の私たちの暮らし方による制約です。
その二つは、ある部分で歩みより、ある部分では背を向けるという相反したものなので、どちらも大切にしながらより良い答を探すことになります。
生活が第一!無理のない場所がふさわしい場所
リビングに仏壇を置くことの是非について、個々の暮らしを抜きに考えることはできません。
できるのは、伝統的な習わしと現実の私たちの暮らし方との両面から、リビングに仏壇を置くことに「無理はないか」どうか考えてみることです。
無理がないと感じられるなら、そこはあなたの家にとって、仏壇を置くのに“ふさわしい”場所です。
そもそも仏間がない
仏壇は「仏間」に置くのが最も自然であることはいうまでもありません。
また、風通しがよく直射日光があたらない場所に造られる「床の間」は、木造の造形物である仏壇の劣化を考慮すれば設置環境としては理想的です。加えて床の間は家内でも格式の高い場所とされることからも、仏壇の置き場としておすすめできる場所です。
床の間の一部を仏壇のための空間とし、仏間として活かすことも少なくありません。
しかし近年では、仏間も床の間もない家は少なくはありません。都市部を中心に、部屋数の限られたマンションなどの集合住宅に住む家庭の割合は高く、一戸建ての新築住宅にしても和室の無い間取りが人気なのです。
関連記事:仏壇の置き場所はどこが良い?仏間や床の間が無い場合でも大丈夫
リビングでもっと故人を近くに感じる
私たちのライフスタイルは大きく西洋風に傾いており、結果としてリビングに仏壇を置くという選択は現実的です。
そして、リビングは必ずしも、仏間や床の間に劣る仏壇の設置場所ではありません。
リビングには、仏間や床の間にはないリビングならではの“ふさわしさ”があり、それはもっと目を向けてもよいリビングの利点です。
それは、仏壇と私たちとの“距離の近さ”です。
床の間(仏間)は、たしかに静かで落ち着いた場所であり、本尊や故人の霊が宿る仏壇を安置する環境としては好適ですが、専用の部屋や場所である為、家の中では疎遠になりがちな場所でもあります。
一方、リビングには家族が集い、喜怒哀楽が展開します。
日々の暮らしが営まれる空間で、私たちは自然に顔を合わせ、心を通わせます。
本尊や先祖・故人の霊をその一員と考えるならば、仏壇を常に身近に置きたいと感じるもうなずけます。
ましてや、和室のない住環境であれば、リビングを第一候補とするのは、無理のない選択です。リビングは、仏壇を置くにふさわしい場所であるといえます。
関連記事:仏壇の置き場所よりも宗派別の祀り方や仏具の配置の方が大切です!
リビングに仏壇をおくなら知っておきたい「仏壇の向き」という伝統
仏壇の置き方に厳密な決まりはありませんが、できればこうあるべきという伝統的な習わしは存在します。それは仏壇を置く“向き(方角)”に関してのもので、いくつかの考え方に分けることができ、宗派によっても違ってきます。
生活しやすさを犠牲にして古来の習いに従う必要はありませんが、旧習など意味のないものとして無視することもすこし引っかかるかもしれません。
そもそも、風習も考慮し仏壇を営もうと努めるのも本尊への敬いであり、祖先や故人を思う心に通じるものです。
住まいの状況が許す限り、叶えられることは叶えましょう。
有名なところでは「仏壇は北向きに置いてはいけない」という話があります。就寝時に北枕を避けるのも同じ発想です。
これは、お釈迦様が北に頭を向けて入滅したことから北という方角を嫌ったもので、よく知られた仏壇の作法の一つです。
ですが今日、仏教的にはそれほど意義のある礼法ではないとされており、過度に重視する必要はありません。
その他にも、仏壇の向きについての代表的な考え方がありますのでご紹介します。
リビングは、比較的レイアウトの自由度が高い部屋ですから、菩提寺の宗派など個々の考え方も合わせて検討すると良いでしょう。
曹洞宗や臨済宗の仏壇の向きの考え方「南面北座」
お釈迦様は説法をするときに南を向いていたという伝えに倣い、仏壇も正面を南に向け、北側を背にする考え方です。お参りする者は北に向かって座りますので、「南面北座」と呼ばれます。
中国では古来、地位が上の者は南を向いて座ったといい、この風習も結びついたようです。また日本家屋では南の窓から採光することが多く、南面の仏壇は北の奥に設置されますので、直射日光を避ける利点もあります。
曹洞宗や臨済宗では「南面北座」の考え方を重視しています。
浄土宗と天台宗両派の仏壇の向きの考え方「東面西座」
極楽浄土は西の方にあるとする「西方浄土」の思想が基になっています。仏壇を通して西の方角を向くことができるように、仏壇は東に向けて置かれ(東面)、私たちは西に向いて手を合わせます(西座)。
古代インドで陽の昇る東側を吉方とした思想も結びついたようです。
浄土宗、浄土真宗、天台宗などが「東面西座」の立場をとっており、たとえば浄土宗と天台宗両派の寺院である宇治平等院は「東面西座」の配置となっています。
日蓮宗の仏壇の向きの考え方「春夏秋冬」
静かで落ち着いた場所ならばどの方角でも問題ないとする「春夏秋冬」の考え方は、方角にこだわった仏壇の置き方を否としています。
太陽が昇る「東」を万物が芽吹く「春」に、太陽が真上に昇る「南」を万物が成熟する「夏」に、陽が沈む「西」を収穫の「秋」に、陽が遮られる「北」を万物が納まる「冬」に例えて、四季それぞれに意味があり軽重の違いはないという思想です。
「春夏秋冬」の考え方をとる宗派には日蓮宗があります
真言宗の仏壇の向きの考え方「本山中心」
仏壇に参ったとき、その延長線上に宗派の本山がくるように配置する形式で、東西南北の方角は問いません。仏壇に手を合わせると同時に、その先にある本山も拝むことになります。
「本山中心」を説く宗派としては真言宗が知られており、総本山である和歌山県の高野山金剛峯寺を向いて参ることができるように仏壇を配置します。
関連記事:仏壇の「置き場所」や部屋に置く「向き」の最適な方角
リビングにマッチした仏壇を選ぶ今どきの空間演出
仏壇の向きに加えて、リビングに置く仏壇を選ぶ際のポイントとなるのは、そのサイズ(大きさ)とデザイン(造形)です。
本来古風な伝統物である仏壇を、現代的な洋風空間のリビングにマッチさせるため方法を見てゆきましょう。
リビングに置く仏壇のサイズ(大きさ)
昔の日本では大きな仏壇ほど故人の供養になり、また仏壇の大きさがその家の繁栄を示すという考えがありました。広い和室のある旧家などでは、今でも堂々とした大きな仏壇が置いてある家もあります。
しかし、そうした大型の仏壇を、コンパクトな間取りが主流の現代型の洋室に押し込めれば、とてつもない違和感が生じてしまいますよね?
そういった違和感は私たちの“暮らしにくさ”につながり、先祖や故人もまたそれを望んではいないでしょう。
ですので、リビングの大きさと仏壇の大きさとのバランスには、十分に配慮しましょう!
生活導線を悪くするようなサイズの仏壇は対象外とし、リビングに置かれる他の家具とのバランスも考慮します。
新しく仏壇を購入するなら、予定している設置スペースの間口・奥行・高さを実測し、納まりのよい仏壇のサイズ感を把握しておきましょう!
また、仏壇屋さんの店内で仏壇を選ぶ際にも、その大きさをお店に確認したり実際に測ったりし、搬入時のトラブルを避けるようにしましょう。
仏壇・仏具の専門店には、タンスやサイドボード、シェルフ(オープン式の収納家具)の上などに置ける小型の上置仏壇や、床置きでもスリムなタイプのものが数多く販売されており、仏壇店はもちろん通販サイトでも多様な商品が紹介されています。
関連記事:ミニ仏壇は小型で人気!通販でも買えますが仏壇店がおすすめ
今の生活にぴったりな高さの家具がある場合は良いのですが、大抵の家具の高さは仏壇での供養時には高すぎたり低すぎたりですから、できれば専用の仏壇台を合わせて購入されることをおすすめします。
関連記事:「仏壇専用の仏壇を置く台『仏壇台』は必要?通販より仏壇店で購入!」
違和感のないサイズでリビングに置かれた仏壇は、日々の生活に自然に溶け込んでいきます。大きさへの配慮は、最も基本となる空間演出です。
関連記事:仏壇独自のサイズ表記「号」とは?お部屋に合うサイズの選び方
リビングに置く仏壇のデザイン(造形)
仏壇はそのデザイン性においても多様化が進んでおり、色々なデザインが選べるようになってきました。
落ち着いた家具調でシンプルな造形の仏壇は、和洋を問わず居室の雰囲気に合わせやすく、リビングに置く仏壇としても人気です。
さらに、曲線を多用したり、扉の外装に凝ったり、欧風手作り家具をイメージしたりと、現代風のインテリアとしても洗練された意匠の仏壇が数多く発売されており、専門店では「モダン仏壇」などの名でラインナップされています。
関連記事:現代の生活に祈りの空間をつくるインテリア「モダン仏壇」
現代の仏壇はカラーバリエーションも豊富です。清潔感のある「ホワイト」は人気のカラーとなっていますし、ブルー系、グリーン系、ピンク系などの仏壇も販売されています。
いずれも、黒や茶系が常識だった旧来の仏壇からはかけ離れた色合いですが、個々の感性を大切にするライフスタイルが浸透した今、リビングに仏壇を置くという供養のかたちもまた多彩です。
そして個を大切にするのは故人への思いをないがしろにすることではありませんから、安心して個性的な仏壇を選ぶことができるんです。
リビングに適した仏壇は小型サイズのモダン仏壇
一般的な住宅やご家族を想定すると、リビングに適した仏壇は小型サイズのモダン仏壇です。
生活動線を遮ることもなく、圧迫感があるほど大きくなく、それでいてリビングという洋風な空間にマッチする素敵なミニモダン仏壇は、それこそ選びきれないほど多くの種類が揃えられています。
ネット通販で種類やデザインを確認
選びきれないほどの種類がある物を買う場合には、まずネットで情報収集しましょう。
インターネットで検索すると、すぐにたくさんのネット通販の仏壇店が出てきます。
位牌や仏具セットに、お目当てのミニモダン仏壇も一覧で情報が表示されますから、幅広いジャンルから小型サイズのもの、そしてモダンデザインの仏壇を探しましょう。
関連記事:ミニ仏壇は小型で人気!通販でも買えますが仏壇店がおすすめ
ここで確認しておきたいのは、どの様なサイズがあるのか、どの様なデザインがあるのか、そしてお値段感はいくらくらいなのか?といった点です。
もちろんデザインもサイズもOK、価格も納得という場合にはその場で買うこともできますが、ちょっと待って下さい。
仏壇は安くはない買い物ですから、一度現物を見てから買うことをおすすめします。
関連記事:仏壇を通販サイトで選ぶ?初めてなら通販より専門店がおすすめ
仏壇店でリビングをイメージして現物を確認
仏壇店では仏壇の現物をみていただけます。
ネットショップでは数多くの仏壇の写真がみられますが、ライティングや画像編集を経た写真は、およそ現物とは違うものです。
ぜひ、現物の仏壇をその目で確認してからお求めになることをおすすめします。
関連記事:近くの仏壇屋・仏具店探しに優良専門店舗だけを一発で検索する方法
>まとめ
伝統やしきたりを重んじつつ現在の住環境に合わせ、個々の感性も大切にしながらリビングに仏壇を置く。言葉にするほど簡単なことではありません。
なにかを犠牲にしなければ成り立たないこともありますし、なにを犠牲にすべきか悩むこともあるでしょう。
リビングに仏壇を置くとき、迷ったことがあれば、菩提寺や仏壇店など仏事の専門家に相談されることをお勧めします。